2025.1.13

開催レポート:フィールドスタディ「震災から復興を通じてエネルギー供給と地域づくりを考える」

レポート

▶︎レポーター

高崎 大輔 人間環境学部同窓会事務局 第5期生(2006年度卒業)

2024年8月26日(月)~29日(木)に実施された、東日本大震災・東京電力福島原子力事故被災地でのフィールドスタディ「震災から復興を通じてエネルギー供給と地域づくりを考える」をコーディネートしました。

開催概要

    開催年月日 2024年8月26日(月)~29日(木)
    参加メンバー
  • 学生7名
  • 松本先生、渡邉先生
  • 同学部出身の菅野(旧姓:西山)綾さんが現地を案内
  • 同学部出身の藤野大河さんが、事前学習から全行程をサポート

    1. 事前学習会
  • 2024年7月20日(土)に事前学習会を開催
  • 2024年9月21日(土)に事後学習会を開催

  • 1.学習のポイント

    ・震災前の福島県と首都圏との関係
     戦後の高度経済成長や電化の発展において、福島から首都圏へ石炭や電力を供給した背景
    ・震災当時の被災・被害状況
     地震、津波、放射能、風評、間接的なもの
    ・現地の状況
     処理水の海洋放出(2023年8月24日開始)による地元への影響
     廃炉、除染、帰還、補償と賠償
    ・電力システムの構造(旧一貫体制から発電・送配電・小売へ分離)
     固定買取価格制度(FITやFIP)について理解する
     特定送配電事業について理解する
    ・電源構成の変化(脱原発から脱炭素)
     再エネが急成長した制度面の整備および導入による地域への経済効果など
     原子力発電の再稼働による影響(安定供給、経済、環境)
    ・地域復興の進捗  過疎・過密、経済、雇用、農林漁業、伝統、スポーツ、観光など

    2.行程

    (第1日目)

  • かつて常磐炭鉱で栄えた湯本駅前の状況を視察し、資源エネルギーの変遷を学ぶ
  • 湯本温泉宿やスパリゾートハワイアンズなどへ温泉を供給する常磐湯本温泉株式会社を訪問。温泉の歴史や温泉の利用拡大、観光資源等について学ぶ
  • 湯本駅前商店街を散策
  • 宿泊した「古滝屋」構内に併設された「原子力災害考証館」で、東日本大震災および原子力事故による被災や復興について対話

  • <写真①>常磐湯本温泉(株)で講義を受ける <写真①>常磐湯本温泉(株)で講義を受ける
    <写真②>温泉でゆったり気分 <写真②>温泉でゆったり気分
    <写真③>考証館でふりかえりと明日からの作戦会議 <写真③>考証館でふりかえりと明日からの作戦会議

    (第2日目)

  • 沿岸部の津波被災地や原子力事故による避難被災地を視察
  • TEPCO廃炉資料館、中間貯蔵施設を視察
  • 避難指示が解除されたばかりの双葉駅前の公営住宅で住民と対話

  • <写真④>富岡町の菅野さんの旧自宅前 <写真④>富岡町の菅野さんの旧自宅前
    <写真⑤>中間貯蔵施設から廃炉作業の様子を覗く <写真⑤>中間貯蔵施設から廃炉作業の様子を覗く
    <写真⑥>双葉駅前の消防団詰め所は当時のまま <写真⑥>双葉駅前の消防団詰め所は当時のまま

    (第3日目)

  • 波倉メガソーラ(楢葉町)と首都圏へ送電するための送電線との接続点を視察
  • NEDO福島水素フィールド(浪江町)を視察
  • 東北電力の昼曽根水力発電所(浪江町)を視察
  • メガソーラによる地産地消モデル(葛尾村)の視察と地域電力会社との対話
  • 工業団地(葛尾村)へあらたに立地されたエビ養殖工場を視察と対話

  • <写真⑦>水素タンクの前に集合 <写真⑦>水素タンクの前に集合
    <写真⑧>太陽光で作られた余剰分は、蓄電池に貯められる <写真⑧>太陽光で作られた余剰分は、蓄電池に貯められる

    (第4日目)

  • 総括として、東日本大震災伝承館(双葉町)および浪江町の沿岸地域の旧請戸小学校と漁港を視察
  • いわき市でもっとも津波被害の大きかった豊間地区を視察と対話
  • 小名浜漁港、小名浜工業団地の視察

  • <写真⑨>請戸漁港でぶらり <写真⑨>請戸漁港でぶらり
    <写真⑩>旧請戸小学校は当時の状態で展示されている <写真⑩>旧請戸小学校は当時の状態で展示されている
    <写真⑪>震災当日、私はここで津波被災に遭いました、説明を受ける <写真⑪>震災当日、私はここで津波被災に遭いました、説明を受ける
    <写真⑫>一日のふりかえり <写真⑫>一日のふりかえり

    さいごに

    まず、松本先生、渡邉先生からコーディネートの依頼をいただき、ありがとうございました。現地との調整や昨年から継続して伝えるべきこと、また、現地は復興途上にあり、日々刻々と変化しているため、その変化を伝えることに力を注ぎました。

    菅野さんには、解体された実家前で幼少期のことやご家族とのエピソードを語っていただきました。気持ちの整理ができない中、今回の依頼に対し、快諾していただき、ありがとうございました。被災者の生の声を伝えていただき、学生にもっとも印象に残ったと思います。 今回は、中間貯蔵施設、廃炉資料館、伝承館、水素製造など施設を実際に見て、現地の方から説明を聞くことに充実させ、また、地元住民と対話する時間を設けました。

    双葉駅前の復興公営住宅での住民との対話で、避難先から帰還される方、また、首都圏から若い世代の方々が新たに移住されていることを聞いた。

    葛尾村では、地元電力会社から事業概要に説明をしていただき、また、現地では、約1メガワットの太陽光発電設備や蓄電池などを案内していただきました。その中で、事業の採算性や自然災害による停電時の対応など諸課題があることについても伝えてもらいました。村内工業団地へあらたに創業されたバナメイエビの養殖工場を見学させていただき、進出に至った経緯、エビの特長、今後の展望等についてお話を聴かせてもらいました。

    最終日には、いわき市豊間地区の語り部ボランティアさんから現在は防潮堤へ造成されたかつての海岸線の住宅地で、地震災当日に津波に逢った話を写真などを用い、伝えてもらいました。その後、この災害を教訓に高台の公園に設置された防災設備や町内の取組について伝えてもらいました。

    毎晩、学生から班別のふりかえりと報告会をおこない、充実したツアーとなりました。著しく復興が進む地域を中心に視察をおこなってきましたが、一方いまだに避難指示が解除されず、震災当時から時が止まった地域があることを忘れてはいけません。

    今後においても現地の動きに注目して、情報収集につとめていきます。

    以上