2025.1.30

レポート:フィールドスタディ「震災から復興を通じてエネルギー供給と地域づくりを考える」をアシスタント

レポート

▶︎レポーター

藤野 大河 2020年3月卒業生

2024年8月26日(月)から29日(木)にかけ、福島県浜通りでのフィールドスタディー「震災復興を通じてエネルギー供給と地域づくりを考える」のアシスタントをいたしました。東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の被災地を巡検し、特に注目した点についてレポートします。

担当:松本倫明先生・渡邊誠先生
学生7名

津波・地震の被災地を知る。「帰る家がなくなった」

東日本大震災の被災地として住むことができなくなったのは、津波被害を受けた太平洋沿岸部と、福島第一原発事故による避難指示および放射能汚染が主な原因です。今回はそれぞれでご自宅を失ったお二人の声を聴きました。

小野さんの場合(いわき市)

小野さんのご実家は震災前、海岸沿いの堤防の上にあるようなオーシャンビューの立地で、とても見晴らしがよく、海のレジャーも捗りそうです。

そこへ地震が発生し、津波は瞬く間に目の前まで押し寄せ、2階へ避難しましたが、腰の高さまでに水位が達したそうです。

彼は、このときのことを「ここまでは津波はこないだろう」という油断していた気持ち、祖母を抱きかかえ津波に耐え、何とか生還した当時のできごとを後世などへ言い伝えるため、語り部になられたそうです。

写真 1 坂本さんのご実家のあった場所 現在、ご実家の跡地は防潮堤や防災緑地として整備されています。

その後、近くの高台に移住され、町内会長を務めるなど地域で活躍されています。
写真 2 高台に作られた防災公園 地区に整備された防災機能を兼ねた公園をご案内いただきました。

菅野さんの場合(富岡町)

菅野さんのご自宅は富岡町。帰還困難区域に指定されたことから避難生活をされていました。公費で建物の解体ができる期限があり、最後まで悩んだ結果ご自宅を解体。 菅野さんのご自宅のあった場所 現在はこの写真のようになっています。

地産地消型の電力会社「葛尾創生電力」

地産地消型の電力会社、葛尾創生電力の担当者にお話しをうかがいました。村内にメガソーラーパネル(約1MW)を設置して発電と蓄電を組み合わせ、既存の東北電力のネットワーク(以下NW)とは別に全長約5㎞にわたる送電網を独自に敷設し運営(「特定送配電事業」)しているのが特徴です。 道路を挟んで東北電力と葛尾創生電力の配電線が並列している 発電から送配電および小売りまでを完結し、電源が太陽光発電であることからゼロカーボンおよび「葛尾スマートコミュニティ」を復興の象徴として標ぼうしています。

しかし課題もあり、事業の採算性や東北電力NWとの連携、人員不足による非常時対応の体制など、厳しい現状もあります。

食の記憶 ポーポー焼き

ポーポー焼き弁当 沿岸部での見学前の昼食に「ポーポー焼き」といういわき市豊間の郷土料理をいただきました。(写真右奥)

サンマをなめろう状にし、ハンバーグのように丸めて焼く料理です。地元の言い伝えでは、サンマを炭で焼いたときに、サンマの油が火に落ちてポーポーと燃えあがることからこの名が付いたと言われています。サンマのうま味と味噌が合い大変美味です。

最後に

震災、津波、原発事故から始まり、その後の生活や企業の動きなどについて多面的に捉えられた4日間でした。語り部の皆さまのお話から、点と点を結び、面的に学習することができました。お世話になりました皆さまには感謝申し上げます。

宿での学生たちの振り返りも白熱したものがあり、大変有意義な機会を得ることができたと感じます。これからも福島に想いを寄せようとあらためて思いました。

2020年3月卒業生 – 藤野 大河

フィールドスタディー「震災復興を通じてエネルギー供給と地域づくりを考える」の様子はこちらの記事もご覧ください。