レポート:「夢と歴史の町」浦安を歩く
2018年10月27日(土)浦安のまち歩きを実施いたしました。
東京メトロ東西線「浦安駅」からJR京葉線「新浦安駅」まで約5kmの道のりを境川沿いに散策をし、浦安市や千葉県の有形文化財に指定された旧家、堤防跡の見学等をし、昭和40年はじめ頃まで盛んであった漁業とその地域の暮らし、高度経済成長期に工業化や都市化を受入れることによって造成された埋立建設の変遷等について学んできました。
浦安と江戸(日本橋魚河岸)を結ぶ“魔法のルート”
かつて浦安は、旧江戸川から多くの土砂が海へ流れ出たことにより干潟が形成され、ハマグリ、アサリ、海苔の漁場としてたいへん繁盛しました。浦安で獲れた魚貝は、この境川から旧江戸川へ出て、新川(船堀川)・小名木川(徳川家康が行徳から塩を江戸へ運搬するため開発した)を経由して江戸まで運ばれており、当時、この境川には約2000艘もの舟が係留されていた。舟は海に出て江戸へ向かうより運河のほうが天候や荒波などに左右されず、短時間かつ安定的に運搬することができ、このルートのおかげで浦安は漁村としてたいへん繁盛し、そのためこの航路を“魔法のルート”と名づけられたそうです。
この境川に並行する「フラワー通り」は、かつて一番通りとも呼ばれ、町の繁華街だったそうです。
<フラワー通り>
1969年(昭和44年)に浦安駅が開設され、人の流れは駅前へ変わり、現在は静かな住宅地となっています。当時、漁場からあがった漁師たちは砂や潮を落とすため、よく銭湯へ通ったそうです。現在、二軒の銭湯がかつての面影を残し営業されています。
<旧宇田川邸>
<境川>
<舟>
<銭湯>
漁場をあきらめ、埋立建設を選択した浦安
1958年(昭和33年)、製紙工場から流れ出た黒い廃液が浦安漁場を脅かすことになりました。そして1971年(昭和46年)、漁業権を全面放棄することになり、その後、昭和50年代から埋立は急速に進み、鉄鋼団地の形成や都内通勤者のベッドタウン化により町中は様変わりしました。1983年(昭和58年)に東京ディズニーランドが開業。この埋立造成により土地面積は約4倍へ、人口は約2倍に成長しました。
埋立の変遷がわかる堤防跡
ここは第一期埋立の境界線になります。かつてこの道路に沿って堤防があった場所で、現在も中央分離帯に堤防ブロック跡が残っています。
<段差道路>
高潮から町を守るため陸側より海側(埋立側)をかさ上げしているため、現在は“段差道路”と言われております。浦安駅周辺からかつての昭和の面影を味わいながら境川沿道を優雅に歩いてきましたが、この道路(境界)を隔て海(埋立)側には、大型流通店、高層住宅など立ち並び、また車両交通量が増え、街を急ぐ様子がうかがえ、街並の変化を肌で感じることができました。地元では浦安駅からこの境界までを「元町」、「中町」といい、この境界から海側を「新町」と言うそうです。
さらに海側へ足を延ばすと、第二期埋立の境界にも堤防跡が残されておりました。第一期は自然の海岸線に造られたため曲線を描いています。第二期は埋立地に造られたため、直線やL字型になっているのが特徴です。
<第二期堤防 L字>
そして堤防脇にそびえ立つデザイン円筒型送電線鉄塔が象徴的でした。この先にある鉄鋼団地等へ電力供給をするため、埋立途上の堤防外側(波打ち際)に建設されたとうかがいました。浦安市の急変と美化へのこだわりの一面を見ることができました。
<第二期堤防 鉄塔>
持続可能な社会を見据えた開発とは
浦安市の人々の暮らしや産業構造の変化は、高度経済成長期の急変急増を象徴的に描き出したものと言えます。昭和33年の汚水事件により漁場を失い途方に暮れた漁師やその関係者は数知れず、「この事件がなかったら、・・」と誰もが怒りや悔しさを覚えたはずです。しかしこの事件は開発を加速させる一つの引き金に過ぎず、経済の流れに逆らうことはできなかったのではないでしょうか。従来から浦安漁場は、浅瀬(干潟)であり、他の地域に比べ埋立に向いていました。そのため遅かれ早かれ浦安の埋立開発は訪れたのではないかと感じました。仮に当時のままハマグリやアサリ漁だけやっていたのでは今のような経済活動を得ることはできませんでした。鉄鋼団地、ディズニーランド、大学等の誘致や高層集合住宅建設によりまち並みは大きく変化をし、莫大な収益をもたらし日本経済にとって意義のある開発であったと解されています。
さいごに
東京メトロ東西線「浦安駅」、JR京葉線「新浦安駅」は、東京に隣接し、千葉県でもっとも東京に近い駅になります。また浦安市郷土資料館(入館料無料)には、かつての漁場の生態、境川での漁師の営み、埋立の変遷などに関わる資料や展示物を見ることができます。私たちが便利な生活を求め、経済成長を遂げた背景に浦安の開発がその一端を担っております。ぜひ一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。東京ディズニーリゾートに比べ、“安く、並ばず、奥深く”楽しむことができます。
<郷土資料館>
当日配布資料